魁吏くんへの恋心を自覚してから月日は流れ。
 はやいもので、今日は二年生の一学期最後の日。
 つまり、一学期の終業式だ。
 長い長い校長先生の話を聞いて、式が終わって。
 いよいよ、これから私たちは夏休みに入る。
 去年の夏休みは、特にこれといった思い出はないなあ・・・。
 大量の課題を終わらせてからも、復習やら予習やらでずっと机に向き合って参考書とにらめっこしてた印象。
 一回里穂と遊園地に遊びに行ったのが、唯一の外出といっていいくらいのレベル。
 でも、今年は去年とは違う。
 学校の近くに引っ越してきたから、里穂とも遊びやすくなった。
 椿ちゃんっていう新しい友だちもできた。
 早速、目の前には楽しみなイベントが待ち構えている。
 それは、花火大会。
 なんでも、川の近くにある神社で毎年開催されているらしい。
 今年の開催日は次の日曜日だとか。
 全然知らなかった。
 言われてみれば、スーパーとかにもちらほらポスターで宣伝されてたような・・・。
 その花火大会に一緒に行こうって、今日学校から帰ってくる前に里穂と椿ちゃんから誘われたんだよね。
 みんなで遊びに行こうって。
 私自身、里穂と椿ちゃんと遊びに行くのはものすごく楽しみ。
 そう、楽しみ・・・なんだけど。
 それと同時に私は大きな課題を抱えてしまった。
 夏休みの課題なんかよりも、断然私にとってはハードルが高い課題。
 里穂と椿ちゃんが言った『みんな』というのは私と椿ちゃんと里穂の三人・・・というわけではなく。
 なんと私、里穂、椿ちゃん、里穂の彼氏、晶くん、そして魁吏くんの男女三人ずつの計六人のトリプルデートをしようというお誘いだった。
 あ、ちなみに里穂の彼氏さんは晶くんと仲がいいらしい。
 去年の委員会が一緒でそれがきっかけなんだって。
 『彼氏さんはいいの?』って里穂に聞いたら教えてくれた。
 きっと私の恋の進展に協力してくれているんだと思う。
 そんな二人のエールを察してしまった私は断ることもできず。
 思わずオッケーしてしまって、魁吏くんと晶くんを花火大会に誘うというノルマが課せられてしまったのだった。
 いや、晶くんはきっと誘えるよ?
 晶くんは優しいし、予定さえ入ってなければきっと来てくれるはず。
 でも、魁吏くんを誘うのは色んな意味で無理!
 来てくれるかどうかの確証がないし、何より恋心を自覚してから変に意識してしまってちゃんと喋れていないし。
 ・・・私が誘うだなんて、とてもじゃないけど無理だよ・・・。