男女問わず人気のある里穂の『親友』の座を狙っている女の子たちはたくさんいる。
 里穂の目につくようにオシャレを頑張ってる子もたくさんいるし。
 それなのに、体育の授業でペアを作るときも休憩時間もお弁当を食べるときにも私が里穂の隣にいることに納得がいってないんだと思う。
 よりによって、地味でオシャレになんて気を使ってません!というような容姿をした私が里穂の隣りにいることに。
 実際、こっちを睨んでいる女の子たちもすごくオシャレな子ばっかりだ。
 もう慣れたことだけど。
 くるっと、その子達から目を離した。
 同じタイミングで、担任の市川先生が教室に入ってきた。
 みんな、足早に自分の席に戻る。
 「全員いるな?んじゃ、今から委員会を決めようと思う」
 教卓に両手をついて、先生が喋りだした。
 委員会かぁ・・・。
 私は去年もなんにも入ってなかったし、今年もいいかな。
 勉強する時間がなくなっちゃうし。
 そういうのは時間があって、責任感もある子に任せたほうが良い。
 あー、でも委員会に入ったら内申にちょっとは影響したりするのかなぁ?
 どうしよう・・・。
 「まず、最初にクラス委員を決めようと思う。クラス委員が決まったら、あとの司会進行はそいつらに任せる。男女一名ずつだ」
 クラス委員には絶対ならないかな。
 私なんかにクラスをまとめるなんて大役つとまるとは思えないし。
 委員会に入るとしても、図書委員とかそこらへんかな。
 図書委員会だったら、図書室を利用している人がいなかったらその時間も勉強に当てられるし。
 「立候補するやついないか?」
 ―――シーン。
 誰も手を挙げない。
 市川先生が困ったように頬を人差し指で掻く(かく)
 「誰もいないのか・・・。あ、この際推薦でも構わないぞ」
 眉尻を下げながら先生が言った。
 次の瞬間。
 「真面目そうだし、桃瀬さんでいいんじゃないですかぁ?」
 「・・・え?」
 静かな教室内に、女の子の声がよく響いた。
 一瞬、何を言われたのかわからなくてかたまってしまう。
 声のしたほうをバッと振り返る。
 多分、あの子だな。
 さっき私を睨んできたグループの中心にいた女の子。
 意地の悪そうな笑みを浮かべながらその子は私を見ていた。
 まるで私の反応を楽しむかのように。
 まあ、私が断ればそれで終わる話なんだけどね。
 「いや、私は辞退します・・・」
 「桃瀬さんがやるなら、僕もクラス委員になろうかな」