地味子、学校のイケメン二人と秘密の同居始めます!

 「マアゴメンナサイ、ココガアナタタチノイエダトハシラナクッテ」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 ・・・・・・だ、誰かなんとか言ってよ!
 今は放課後、出来上がった台本をもとに役者のみんなで練習をしてるんだけど。
 私がセリフを読んだときだけ、他の役者の子たちの空気が凍りつくのがわかる。
 私だってわかってるよ、私が酷い大根役者だってことくらい!
 さっきの『まあごめんなさい、ここがあなたたちの家だとは知らなくって』っていうセリフも私が読めば何故かカタカナになることくらい、私が1番知ってる!
 だから、役者なんて無理だって思ったのに・・・・・・。
 あまりの酷さに、誰も何も言えないまま今日の練習終了の時間がきてしまった。
 「あ、絢花ちゃん・・・・・・」
 「あはははは・・・・・・椿ちゃんは本当に演技が上手だね・・・・・・私とは違って・・・・・・」
 さすが元演劇部員ということもあって、椿ちゃんの演技はとてもすごかった。
 いや、元演劇部員だとしても上手すぎないか!?というレベルで上手だった。
 まだ椅子に座ったまま、衣装じゃなくて制服のまま、背景もただの教室なのに椿ちゃんが何かセリフを喋ればそこがもうおとぎ話の世界に見えてくるような気がした。
 クラスの子たちも、「十朱さんすごーい!」「めっちゃ上手!」と、椿ちゃんをベタ褒め。
 みんなの輪の中で照れたように笑う椿ちゃんは、もちろんとんでもなく可愛かった。
 「・・・・・・特訓です」
 「え?」
 「私が!絢花ちゃんを!特訓!します!」
 椿ちゃんは言葉を一つ一つ区切って、そう宣言した。
 椿ちゃんが特訓をつけてくれるの?
 それは願ってもないというか、ありがたいというかだけど・・・・・・。
 「本当にいいの?」
 「もちろんです!絢花ちゃんにも演劇の楽しさをわかってほしいですし!明日から毎日1時間、特別練習というのはどうでしょう?」
 そう言って私の両手を握った椿ちゃんの目は、お花について話してるときくらい生き生きとしてる。
 そこまで熱心に言ってくれるなら・・・・・・。
 「椿師匠!ご指導よろしくお願いします!」

 「・・・・・・絢、なんというか・・・・・・演技の才能、なかったんだな」
 「んな!?」
 学校から帰ってきて、3人でいつものように晩御飯を食べているとふいに魁吏くんがそう言った。