いつまでも受け身のままじゃ、恋愛は絶対に進展しない・・・か。
 ・・・そっか、そうだよね。
 早速、里穂のアドバイス通り今週末デートに誘ってみよ!
 善は急げだ!
 「二人とも、聞いてくれてありがとう!私、頑張ってみる!」


 「か、魁吏くん」
 晩御飯のカレーを食べ終えて、私は自分の部屋へ戻ろうとする魁吏くんを呼び止めた。
 そういえば、初めて一緒に食べたのもカレーライスだったよね。
 晶くんは何かを感じたのか、私に目くばせして先に部屋に戻ってくれた。
 つまり、共有スペースには私と魁吏くんの二人しかいない。
 「今週末、一緒に映画見に行かない!?」
 里穂によると、初デートにおすすめなデートスポットは映画館らしい。
 映画を見ている間は会話がなくても大丈夫だし、見終わったあとは映画のことでおしゃべりができるから、話題がなくて気まずいなんてことがないらしい。
 行く場所一つでも、ものすごく考え込まれているんだなぁ。
 感心感心。
 「・・・・・・いいけど」
 「本当!?」
 「なんで嘘つくんだよ」
 そう私に突っ込んだあと、魁吏くんはちょっと笑う。
 うっ、すごくかっこいい・・・。
 魁吏くんファンの子が見たら、きっと卒倒しちゃう。
 あ、そうそう魁吏くんファンの子といえば・・・。
 体育祭が終わったあと、どんないじめが待っているのかと身構えていたんだけど、特に何もされていないんだよね。
 何もされてなくて、逆に拍子抜けしちゃうくらい。
 魁吏くんは「桃瀬に何かしたら許さねぇから」って言ってたけど、いくらでも魁吏くんの目を盗んで私をいじめる方法はあるから、ちょっと不安だったんだけど。
 まあ、何もないに越したことはない。
 って、そんなことはおいといて。
 やった、映画見に行くのオッケーしてもらえた!
 里穂の言う通り、自分から何か行動を起こすのって本当に大切なんだね。
 一つ勉強になった。
 ついに、ついについに魁吏くんと念願の初デート!
 嬉しさのあまり口元が緩んじゃう。
 上がった口角が、いつまでたっても戻ってこない。
 どんな服着ていこうかな?
 また今度、里穂と椿ちゃんに相談してみよ!
 私よりも、二人のほうが絶対に美的センスあるもん!
 コーディネートに張り切る里穂と、その隣でにこにこ微笑む椿ちゃんの姿が簡単に想像できる。
 ふふ、今からデートが楽しみ!