地味子、学校のイケメン二人と秘密の同居始めます！

　「チッ、鍵よこせよ」
　「あっ・・・！」
　はっきりしない私の態度に苛ついた(いらついた)様子の黒江魁吏が、無理矢理鍵を取ろうと腕を伸ばす。
　当然女子の私が男子で、しかも高身長の黒江魁吏に力で勝てるわけもなく。
　いとも容易く(たやすく)鍵は奪われてしまった。
　「返してください！」
　「返すわけねぇだろ。本当にしつこいんだよ」
　「でもそれがないと・・・！」
　私、行く場所がなくなる！
　伯父さんたちの家に一時的に帰る事はもちろんできるけど、それでも家具とかはもう運んである。
　それに一日もたたずに帰るなんて、引越し費用を払ってくれたり契約をしてくれた伯父さんたちに申し訳なさすぎる。
　「ちょっと、本当に返して・・・！」
　「魁吏？家の前で何騒いでるの」
　私の声にかぶせて、後ろから誰かが黒江魁吏に話しかけた。
　「晶、このストーカーがあまりにもしつけぇんだよ」
　「だからストーカーじゃないって！」
　他の人にまで誤解を与えないでほしい！
　「ストーカー？」
　「違います！」
　バッ、と後ろを振り返る。
　そこには私が通っている学校の制服を着ている、これまた顔の整った男子生徒が立っていた。
　今、黒江魁吏はこの人のこと「晶」って呼んだ？
　じゃあ、この人が里穂の言っていた「真白晶」さん・・・？
　「あれ？同じクラスの桃瀬絢花ちゃんじゃない？」
　「え、なんで名前を知っているんですか？」
　私、真白さんと面識あったけ？
　1年生の時に同じ委員会に入っていたとかでもないし・・・。
　行事とかで名前を知られるほどの活躍をしたこともない。
　「今日、自己紹介のとき目立ってたでしょ？」
　そう言いながら真白さんはクスクス笑った。
　あ・・・！
　そういえば、私今日いきなり悪目立ちしたんだった・・・！
　顔から火が出そうなくらい、恥ずかしい。
　「桃瀬さんがどうしてここに？」
　「だからストーカーで」
　「黒江さんは少し黙っておいてください」
　「は？」
　これ以上事態をややこしくしないで！
　黒江さんは低い声を出したけど、それを真白さんが「魁吏」とたしなめた。
　良かった、この人には話が通じそうだ。
　「実は、私今日からここに入居することになっていて」
　「入居？ああ、そういえばオーナーさんがそんなこと言ってたね」
　「でも、お二人もここに住んでいるんですよね・・・？」
　真白さんがここにいるってことは、もう一人の入居者はきっと真白さんのことだよね？