「ない、ないっ・・・!」
 「絢花(あやか)、そろそろ諦めなさい」
 そう言って私の肩にポン、と手を置いたのは親友の橙山里穂(とうやまりほ)
 「でも・・・」
 「クラス替えなんだからしょうがないでしょ」
 「うう・・・」
 私の高校生活最初の一年間は目まぐるしく過ぎていき。
 今日は高校2年生になって初めての始業式。
 みんな、自分の新しいクラスを確認するためにクラス発表の張り紙の前に集まっている。
 計6クラス分の生徒が同じ場所に集まっているわけだから、人口密度はとても高く周囲はガヤガヤ騒がしい。
 「絢花はA組だったよ」
 「よりによって一番離れたクラス・・・」
 里穂の新しいクラスは2年F組、そして私、桃瀬絢花(ももせあやか)のクラスは2年A組。
 6クラスの一番初めのクラスと一番最後のクラス。
 教室の距離も一番遠い。
 私が探していたのは2年F組の生徒名簿に載っていてほしい私の名前。
 しかし、無情にも新しいクラスは親友と別のクラスだった。
 「休憩時間には遊びに行ってあげるからそんなこの世の終わりみたいな顔しないでよ。きっと、いつものように絢花は勉強してるんでしょうけど」
 「アハ、アハハハハ・・・」
 そう、何を隠そう私は生粋のガリ勉、まさに「参考書が彼氏です!」というような地味女なのだ。
 カントリースタイルで2つにくくられた黒髪にメガネ。
 特に良くもないスタイル。
 そんな漫画から出てきたような、絵に描いたような地味子の私には里穂以外に親しいと言える友達はいない。
 もちろん、メガネを外すと美少女・・・なんてことあるわけもない。
 自分の容姿についてはすでに自覚している。
 対して里穂は社交的な性格で、明るく男女問わずの人気者。
 大きくてパッチリとした二重の目に顔に影を落とすくらいのまつげ、すっと通った鼻筋。
 肌荒れなんて一つもない白い肌によく映える、乾きを知らないぷるぷるの唇。
 ミルクティーベージュ色でサラサラな髪を、いつもおしゃれに結っている。
 そんな非の打ち所のない容姿を持った女の子の中の女の子なのだ。
 告白も後をたたない。
 本人曰く、全部断っているらしいけど。
 「そういえば、今日だったけ?引っ越すの」
 「あ、そうそう」
 今まで私は伯父さん、伯母さん、従兄弟と四人で暮らしていた。
 私のお父さんとお母さんは私が小学生のときに事故で亡くなってしまった。