『足の裏へのキス』



タタタッ

私がスマホをタップする音が部屋に響く。

ソファーに座っている私は,眠たくなって誤魔化すように足を組み直した。



「ねぇ~?」

ーん~? なに?



彼が私に声をかける。

さっきからずっとこの調子。



「スマホばっかり見ないでよ。俺のことも構ってくれないと俺なにすればいいのか分からないよ」

ーなんで? 自分のしたいことすればいいじゃん。テレビ付けてもいいよ?

「だめだよ。つまんないもん。君がいないとどうしてらいいか分からない」



彼は床をごろごろと転がって私を見上げた。



ーうっ



そんな顔しないでよ…

顔はそんなに可愛い系ではないのに,何故可愛く見える。

自分の魅せ方を熟知したその角度は,あまりにあざとい。



ー分かったからあとちょっとまってて



私は彼に手のひらを向けた。

私の降伏の合図。

なのに彼は不満そうな顔をする。

そして私の足を取って,その甲をさすっていじけた顔をすると



「もう十分まったよ,俺。ね?」



私の足裏に唇を押し当てた。



ーちょっ



そんなとこにまでキスするなんて…!


ー汚いでしょ!?



あり得ないと驚愕に満ちた顔で,呆然と彼を見つめる。

すると彼はまた同じ行為を繰り返そうとした。



ーわかった! 分かったから



これ以上は止めてと悲鳴のような声をあげると,彼はピタッと止まる。



「ほんと?! ん~,じゃあなにしよっか」



キラキラと顔を輝かせる彼。

…決めてなかったんかい

私はため息をついて彼を恨みがましくみると,自分の足を抱え込んだ。



        ー『強い忠誠心·依存心』