『太ももへのキス』



「あんた,俺の事おちょくってんの?」

ーそんなっ



目の前の激おこ彼氏に私はたじたじ。

原因は先程起こった出来事にある。

私が友達に誘われて,マッ○に行ったこと。

その友達の友達の友達男子3人と遊ぶからって言われて。



『あくまで合コンじゃなくて遊ぶだけ! もう一人女の子も来るから!』



私はもちろん拒否した。
だけど……



『最近全然遊んでくれないじゃん! 彼氏もいいけどたまには友達も優先してよぉ~』



そんな風に泣きつかれて,私は日頃の罪悪感からおれてしまったのだ。

行ってみるとやっぱり合コンにしか見えなくて,陽気に自己紹介を繰り広げる友人とその他の人たちを横目に,私は早々に帰りたくなっていた。

こんなの知られたら絶対怒られるよ……彼女がこんなところに来てるなんて知ったら嫌な気分になるよね…



『ーあのっ私やっぱり……』

『あんた,こんなとこでなにしてんの?』



そこにやって来たのが彼。

彼はまず私を見て,同じ席に着く人たちを見て,理解したように眉を寄せた。



『ーあのっこれは…』



何か弁解しようと思っても,言い訳なんて思い付かなくて。



『はぁ……あんた,こいつの友達? 悪いけど連れてくから。あともう誘わないでくれる? こいつ俺のなんで』

『あっはい,どうぞ』



友達は初めて見た私の彼氏に顔を赤くして,私にごめんのポーズをとる。

腰を抱かれて,私は苦笑いしながらその友達に手を振った。



「分かってるよ,どうせ上手く言いくるめられたんだろ? お人好しな上にチョロいから」



合ってるけど…



「でもおちょくってないって言うなら,なんで俺に言わないわけ? 珍しく出掛けてくるしか言わないからおかしいと思ったんだよ。それってなんとなくあれ予想してて悪いなって思ったからじゃないの?」



全部彼の言う通りだ。
断れなかったなんて言い訳でしかない。
言われて行くと決めたのは結局私。
少しでも怪しいなら彼に相談するべきだったし,もっと言うなら私が断るべきだった。



ーごめん…

「別に,謝らなくったっていいけど」



彼はジリジリと私を追い詰めて,とうとう私はソファーにドッと座る。

彼はヤンキー座りをして,私の左足を持ち上げた。



ーやっ



何をするの!?

私は思わず声をあげる。

彼はそんな私を見て,今度は私の露出した太ももに鼻をすりっと寄せた。

そして私の目をじっと見つめると,見せつけるかのようにそのままキスマークをつける。



ーん…っ



突然に,それも思いの外強く吸われて,私はとっさに当てた指の隙間から声を漏らした。

彼は自分で付けた跡を眺めて指でなぞると,すっと立ち上がる。

そして



「あんたは,俺のだから。他に行こうとするのは絶対に許さない」



彼はそう強く言って,私から離れた。



「それ見て,ちゃんと思い知ればいい」



私はゆっくりと頷いて,彼は部屋をあとにした。


            ー『支配したい』