『鎖骨へのキス』



ーん~!



お風呂あがり,私はすっかり温まったからだで伸びをした。

慣れた手付きでバスタオルを首にぶら下げると,そのまま風呂場を後にする。



ーあがったよ~!



私はリビングにいる半裸の彼氏に声をかけた。

彼は現在びしょ濡れである。

2人で歩いていた帰り道,急などしゃ降りに見回れ,私は彼を自分の家に招き入れたのだ。

彼は声をかけた私をみるなりぎょっとする。

私はそれに気づかず,冷蔵庫へと向かった。

お茶のボトルを取り出して



ー勝手が分からなかったりしたら聞いてね~



と後ろにいる彼に言って振り向くと,いつの間にか彼は私の隣まで来ている。

どうかしたのかと聞こうとした私の横に,彼は片手をトンっと置く。



「あんた,少しは危機感持てば?」



彼の射抜くような視線に私はたじろいだ。

意味が分からずえっと戸惑う私に,彼は続ける。



「短パン生足,バカなの?」



彼は私を鼻で私を笑うと,そっと一瞬だけ太ももを触り,短パンの裾をくっと引っ張る。



ーきゃっ…なっなにするの!



思わず手を下に伸ばせば,彼は手をパッと離した。



「そう,それでいい。キャミの上にもなんか着とけ。俺の前で無防備な姿さらすな」

ーんっ!



彼は私の鎖骨に歯をたてると,ペロッと舐める。

そして,ビクッと全身を震わせた私を見て,彼は仕上げと言わんばかりに羞恥やらなんやらで赤くなった鎖骨にキスを落とした。

初めての経験に混乱する私に,彼はさらに言葉を続ける。



「あと,せめて髪くらい乾かせ。俺,あんたが思ってる程余裕ないから……次隙作ったら襲う」



私の髪から落ちた雫をじっとみて語尾を強めた彼は,私に背を向けてお風呂場へ向かった。

パワーワードってこういうのを言うのだろうか。

私はボトルを近くに置くと,うわ~っと両手で顔を覆い,へなへなとその場に座り込んだ。



            ー『性的な欲求』