『腰へのキス』



ーわぁっ見て!



私はソファーでごろごろとスマホを見ていた。



ー○○ ○○,今度の映画に出演するんだって! 絶対見に行こうね!

「……そうだね」

ーあれ? あんまり乗り気じゃない? こういう系嫌いだったっけ。この俳優さんすっごくかっこいいよね。演技も上手くてつい見いっちゃうって言うか……ひゃぁ!?



ちょっと



ーもうっ話してるのに止めてよ!



腰とか変なところにキスしないでよ。
しかも服めくってまで…

私が顔を赤くして怒ると,彼はどこか満足げに笑う。



「ごめんね。あんまりその人の事ばっかり喋るから意地悪したくなって。それにずっとスマホ構ってるし」



そう言われて,私は言葉に詰まった。

チラッと時計に目を向ければ,かれこれ1時間も彼を放置していたことが分かる。

……ここが彼の家であるにも関わらず。



ーそれは,その……ごめん



結局謝ることになったのは私。

彼は私を見て,片手で顔を隠すと,ゆっくり私を抱き締めた。



「上目で謝るなんて誰に教わったの? はぁ,映画,来月上映したら見に行こうね」

ー? うん



私は嬉しくなって笑顔になる。

語尾もどこか上がった。



「もう,可愛いなぁ。誰にもあげたくないや」



彼もまた,どこか楽しそうに私を抱き締めた。


            ー『束縛したい』