「お姉ちゃん……ごめんなさい」
「ミルモ……」

 しばらく泣き声は止まらなかったけれど、それはいつしか小さくなり弱くなり……やがて消え去って、ミルモはあたしを『お姉ちゃん』と呼んでくれた。

「パパとママは、あのおじさんの言ったアタシの誕生日の前の日にいなくなったの。お友達のお家から夕方帰ったら、ママの仕事場はラヴェンダーの花が沢山散らばってて、踏んだみたいに潰れてて……だからもう全部……仕事もミルモのこともみんな嫌いになって、パパを連れて逃げちゃったんだと思ってた……」

 うな垂れてゆく目の前の少女を、あたしは今一度ひっしと抱き締めた。

「お姉ちゃん……あのね」
「うん?」

 彼女を自由にして顔を合わせる。それはとても申し訳なさそうな雰囲気を放っていた。

「アタシ、本当はもっと前からお姉ちゃん達の話を聞いてたの。お姉ちゃんのパパとママも、もういないって本当?」
「あ……うん」

 そんなところからミルモは居てくれてたんだ。あたしは嬉しさと気まずさが複雑に絡み合った淡い笑みを返した。

「あたしも八歳の時に同じ化け物に襲われたの。あたしは助かったけど、父さんと母さんはね。でもおじいちゃんが居たから……あたしは何不自由なく生活出来た」

 ミルモのように、独りぼっちになんてならずに済んだんだ。