「あ、あの……っ」

 更に続けて九十度回転した彼の背中へ、瞬間声を掛けていた。振り返るラヴェル。いつものうっすらとした優しい微笑み。

「あたし……一つお願いがあるのだけど」
「お願い?」

 真剣な瞳にちゃんと聞かなければと、あいつはあたしの隣へ戻った。

「あたしに……ミルモを任せてもらえない?」
「……」

 言葉がないまま驚きの表情が返される。これが夕食の途中、あたしが一生懸命考えた事柄の一つだった。そしてもう一つが、此処まで取りにきた“忘れ物”。

「ありがとう、ユーシィ。でも──」
「あんたを疲れさせたくないのもあるけどっ。……ちゃんと真実を伝えて、ジュエルじゃない力で……人としての思いやりで彼女を立ち直らせたいの! 少し時間が掛かるかも知れない。でも──」
「いいよ」
「え?」

 お互いにお互いの二の句を止めた後で、ラヴェルはニッコリ笑ってあたしの願いを受け入れてくれた。

「そんな風に考えてくれてるなんて知らなかった。ありがとう……とても助かるし……とても嬉しい。時間は気にしなくて大丈夫だよ。その分こちらは剣の技術を磨けるのだから。ミルモのこと、宜しく」
「うん! うん!!」

 思わず抱きついてしまいたくなるくらい嬉しかった。あたしにも出来る! 役に立てる!!

「じゃ、風向きが戻らない内に帰ろう。ユーシィ、悪いのだけど帰りのゴンドラは独りで乗ってくれる?」
「……え?」

 さっきから風向き風向きって何だろう? それにどうしてあたし独りで??