『女児は三歳になるまでは普通に育ちました。が、王妃の懐妊と共に、王より魔法を掛けられました。その魔法とは……時間を……止めるものでした』

 ──時間を、止める?

 その言葉に何かが引っ掛かった。何処かで聞いた言葉……それって……あの……ロガールさんとツパイの再会の時だ!!

『ジュエルの花嫁候補は多ければ多い程、選択範囲が広げられる訳ですから、王家としては好都合なのです。ですからそれも候補を増やす為の強硬手段だったという訳です。王子とジュエルに気に入られる花嫁となれるよう、女児は王子の年齢に近付くまで、魔法で時間を止められることになりました……それが──』
「それって、ツパイなのっ!?」

 ツパイが答えを口にする前に、あたしは目を大きく見開いて、驚愕の気持ちを抑え切れずに叫んでいた!

『……薄々感づいていましたが、やはり僕を男性だと思っていましたね?』
「ご、ごめん……ツパイ……」

 あたしの決まりの悪そうな謝罪を聞いて、喉の奥から発せられる、吹き出すような笑いが聞こえてきた。

『いいえ……気にしていませんよ。僕も性別不詳にしたいからこそ、こんな外見でこんな口調なのです』

 長い前髪で顔半分を見せないのもそういうことなんだろうか?