『此処からは貴女も関わる話になります。王家アイフェンマイアと義眼師デリテリートは、基本その職を男系が継いで参ります。が、貴女の家系【薫りの民】ミュールレインと、タラの家系【彩りの民】であるハイデンベルグ、そして……僕の家系【癒しの民】のユングフラウは女系世襲です。ですから、貴女の母上も嫁いだのではなく、父上がミュールレインの籍へ入ったものと思われます』
「な、なるほど……」

 そうなれば母さんのラストネームが残るのも納得がいく。けれどタラさんとツパイ、そしてうちの家系が持つ【民】の名前って何なのよ?

『この三家系に共通する物は、「力を与える要素を持つ」ということです。その『力』とは、植物のラヴェンダーにも共通する三要素なのですが……ヴェルがラヴェンダー畑に囲まれた国だというのはご存知ですね? 三要素とは【香り】【色】【薬効】のことです。僕達の家系の女子は、それぞれその力を身に宿しているのです』
「う、うん……」

 何となく分からないでもない。だからラヴェンダー・ジュエルを継承する王家出身のロガールさんも、その血統を持つラヴェルも、その血であたしの持つ『香り』を感じたんだ……きっとそういうことだ。

『ラヴェンダー・ジュエルは国を()べる力の発生に、その要素と……同時に溢れる愛情を必要とします。……つまり『愛情』という『恵み』を必要とするジュエルは、この三家系のいずれかから……必ず『花嫁』を選んできたのです。……分かりますか? ユスリハ』
「ふうん……え? ん? ──ええっ!?」

 理解する前に適当な相槌を打ってしまったあたしは、良く噛み砕きながら驚きの声を上げていた。



 ──それって、あたしも……は、花嫁候補!?