頭の方向へ物凄い勢いで飛び出したカプセルは、刹那広がった青い世界を斬り裂いた。そのスピードが徐々に失速し、重力に身を委ねようと落ちる力に変わる頃、頭上に大きな花びらが開く──パラシュート。あたしの身体は立っている時と同じく頭が上に、足は下を向いて左右に振られながら、ゆっくりと落下し始めた。

 カプセルは全面が透明なので、ブランケットを下へ押しやり遠く背後を見やる。既にかなり低位置の空にツパイらしきカプセルが見えた。左手やはり少し下方にタラさん、そして正面には……落ちてゆく飛行船が認められた。

 ラヴェル……どうなったのだろう? ちゃんと脱出出来たんだろうか……マントってあの初めて会った時に(まと)っていた黒いマントよね? あれで心配ないってどういうこと?

 あたし達の真下は深い森だった。これが砂漠や荒野ならば、降り立った後に皆を探し易いけれど、木々の下ではかなり困難だ。だけど……そう……ウェスティはあたしを見つけてあげると言った。あたしは一体どちらと合流すべきなの?

 自分が少しずつ下降していくように、飛行船も向かって右方向へその巨躯を落としていった。あの中にまだラヴェルが居るとしたら……森に不時着したら、船と彼はどうなるの!?

 成す術もなく見送る白い楕円の気嚢(きのう)が、少しずつあたしから遠ざかってゆく。が、その向こう側から小さな黒い点が現れた。重力に逆らって気嚢を飛び越えこちらに向かってくるのは……ラ、ラヴェル!? ホントだ……黒いマント! それがモモンガ(ピータン)の飛膜のように膨らんで、あいつを上昇気流に乗せ運んできた!!