臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。

今日に限って教室へ来なかった夾くん。

私からも探していたのに,会うことはできなかった。

そうしてやって来た昼休み。

夾くんは課題に追われているらしく,グランドには姿を現さなかった。

私はそういう事かと項垂れる。

探したと言っても,雫の話を聞いて教室に凸ることは流石に出来なかったのだ。




「つくずくタイミングの悪い男ね」



雫が何処か恨み言っぽくいう。

夾くんと何かあったのだろうか。

ムーッとした顔をしている。

そこも可愛い。



「みお」



焦った顔の澪。

要領のいい澪がここにいるのは当たり前。



「澪」

「夾と映画行くの?」

「断るんだって」

「そ」



素早く答えた雫に澪は言葉を詰まらせ,若干恥ずかしそうにして帰っていく。



「なんで知ってたんだろ」

「夾くんが世界一鈍感なあほだからでしょ。…立派に当て馬しちゃって。それは私もか」

「?」



はっと嘲るような笑み。

言葉の意味も真意も分からないけれど,雫には珍しく,毒をはいた。

どこか傷付いた顔を見る。



「なんでもない」



雫は私に,嘘だらけの笑みを向けた。