臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。

じりじりと後ろに下がると,夾くんに手をとられ,一緒に走り出した。

あまりに急で,私の心臓はひぃっと悲鳴をあげる。

手,手!!

いくら澪が好きでも,男子を意識することくらい私にもある。

じわじわと頬が染まっていくのを,誰よりも実感していた。

私の手を引くような男子は,ただの2人だけ。

つまり,免疫がない。

夾くん止まると同時に,私は勢いよくしゃがみこんだ。



「ぅえ!? すいません,俺速かった…」

「ち,違うの…その」

「どうし」

「て,はなして」



私自身は何ともないのだと顔をあげるも,情けない顔をしているのが鏡をみなくても分かる。

もう0~100までが恥ずかしくて,次第に瞳が潤んでいった。