臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。

ずるい,ずるい。

何が,どうして。

分からないけど,何か大事な感情を押し殺したような澪の言葉は,確かに本心だった。

怖い。依存とかではなくて,ただ(好きな人)に嫌われたくなくて。

そのあとは



『ご飯つくろ』



そう切り出した澪に言われるままキッチンに向かって,あとはいつも通り。

でも,なんだかそのいつも通りすら,澪がわざとそうしているように感じて。

なにがいけなかったのかな。

ずっと,怯えてる。

家族ですらいられなくなることに。

違う。家族でいられなくなることに。

……なんで? なにか,忘れてる,気がする。



「みおさん!」



ーハッ

…え?



「あっ! 夾くん! まだ始まって無かったの?」