臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。

上ってどこだろうと思っていたら,着いたのは澪の部屋。

ドアを閉めた澪が,すとんと私を抱き締めるように座る。



「えっちょっと…」



この体勢は恥ずかしいかな,なんて…



「言って」

「え?」

「もっかい,ちゃんと」



困惑しながら首だけなんとか回すと,澪がムッとした顔で拗ねていた。



「何回でも言っていいから,っていうか言って。母さんじゃなくて俺に」



ぎゅむぎゅむと,澪の身体が押し寄せる。

お腹がぎゅっと凹んで,ほんの少しくるしい。



「…私,澪の匂い,すき」



ふわんと鼻を掠めた匂いに,私はほっと息をつく。

何て言うか,落ち着く匂い。

これでこそ澪って感じがして,好き。