臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。

そこに,期待や安堵はない。

救急隊員に事情を訊かれ,私はお父さんを預けた。



『ちょっと!!!』



連れていかれそうになったのを,私は振りほどいて走る。

心臓が止まってる。

血が足りない。

この先を,知っていた。

泣く時間もなく,私は走る。

お父さんに託された言葉を,一言一句違わず伝えるために。

血塗れで走る小学生。

近所の人や警察に見られれば,きっと補導されていた。

ーガチャッ



『おかえり。遅かった……(みお)!? どうしたの!!!』



血相を変えて,駆け寄るお義母さん。

幸いなことに,澪はその場にいない。



『お父さんが,事故に遭った』

『え……』



確実に伝えるために,お義母さんにも時間をあげられない。