臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。

『最近仕事ばかりだったもんな。今日は5時前にあがるよ』

『ほんと!?』

『あぁ,いいの? 気をつけて帰ってくるんだよ』

『分かってる』



あれは,お父さん。

自分や澪を見るに,多分小6手前くらいかな。

事故に遭うほんの少し前くらいかもしれない。

私とお義母さんが嬉しそうに声をあげて,澪だけが黙ってソファーに座っている。

だけど,きゅっと結ばれた唇から,澪も同じ気持ちなのだとわかった。

ちっちゃい澪も,可愛い。

そこまで小さくはないけれど,今と比べれば全く違う。



『じゃあ私も早く帰ってくる! 一緒にご飯作ろ!』

『それなら皆でポテサラでも作ろう。工程も多いし,皆好きだろう?』

『いいね,材料は私が買っておくよ』