臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。

「だとしても」

「菖……」



言い募る菖に,私は両眉を下げた。

私はどうあっても,菖を受け入れる事は出来ないから。



「ちょっといい?」

「「え…?」」



猛者だ,勇者だと誰かが言った。

こうタイミング良く現れるのは2人しかいない。

この中で,私のために声をあげる女の子なんて



「雫?」



しかいない。



「ねぇ,あなた,名前は?」



鈴の転がるような可愛い声,動作,にっこりと形作る顔。

その様子に,面食らった顔をした菖はぼそりと「百鬼,菖」と答える。




「そう,私はね,蕪木雫。ねぇ菖くん,あなたはフラれたのよ,たった今。澪の気持ちが決まっている以上,何を言っても無駄なの。これ以上は,追い詰めるだけよ」