臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。

「うん…ふふっ。分かった,ちゃんと,話す」

 

確かに,私はあの日,知られたく無かったからと何も話さなかった。

それは今も変わってない。

好きな人がいたら諦める。

とはならないかもしれないけど,私の意志が堅いことさえ伝われば良い。



「あははっそのちょーしだよ,みおちゃん」



その言葉が,温かく私の背中を押した。

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「可愛いね,みおちゃん」

「礼夢はまたすぐそうやって……え」

「なに」

「まじなの」

「なにが?」

「それこそまじなの? …………澪は」

『あんたじゃむりよ…』



雫は胸の内からでかかった言葉を,自分だけが知るものとしておさめた。

わざわざ言うのも野暮よね,と雫は礼夢を見上げる。

澪が行ってしまった後のこの会話は,生涯雫だけのもの。

だって,礼夢がなんにも気付いてないから。

そんな何にも気付いてない礼夢の世界一柔らかい顔は,雫だけが知っている。

ーばかね,どいつもこいつも叶わない恋を追っかけて。せめてあの2人には,拗れず上手にやって欲しいのに…。