臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。

『私,昨日1日考えてたんです。それで,この時間に電話をとりました。私が今から話そうとしていることは,私の独断で,おに…兄は関係ありません』

「うん。それで?」

『私が話すのは……きっと,澪さんの知らない兄です。恐らく,2人が最後にあった日と,それから』



直感的に,『聞きたくない』そう思った。

けれど,年上としてのプライドがそれを許さない。

この子は兄を思って,必死に電話を握っている。



『それを澪さんが知らないのは,よくないと,私が勝手に判断しました』



誰か,誰か,この電話を手放す理由を頂戴。

今すぐに,なんでも良いから。

ー全部自分の蒔いた種なのに。



「分かった,聞くよ。いつまででも」



お互いサボる事になっても,ちゃんと聞くよ。

私は諦めに近い感情を,痛むお腹の中にしまった。