ハロー、愛しのインスタントヒーロー



現にそうなっているのだ。絢斗が私に会いたがっているのは、彼女が一番分かっているはず。
けれども絢斗の希望を通してこの町に戻ってきた。それは、多分。


「見張るためだったんじゃないですか? 自分の目に届く範囲に私を置いておきたかった。そうすれば、自分が介入することができるから」


今のこの状況がまさしく。ついさっき、二人で出掛けるのかと尋ねてきたのもその延長線上だったのではないだろうか。絢斗が否定したら、彼女は安堵したように表情を和らげていた。

家出、だなんて口走る絢斗のことだ。いつか突然不満が爆発して、勝手に私のもとへ行くかもしれない。
そうなる前に私と引き合わせた。再会という、響きの綺麗で穏便な形で。

多少の接触は許容しながら、間違っても一線を越えることのないよう、彼女はしかと見張っている。


「……そこまで理解してるのなら、私の言いたいことは分かるでしょう?」


諦めの滲む微笑で、沙織ちゃんが促してくる。


「絢斗ともう会うなって言いたいんですか」

「現実的に無理でしょうね、本当はそうしたいけれど。それに、今すぐ会うなって言っても、絢斗には意味ないだろうから」