結果として、暮町家に訪問することになった。
久しぶりといっても前とは違う家だ。懐かしさを感じるかと問われると、答えはノー。
玄関に入って早々、置かれた雑貨やインテリアからは、確かに以前のような雰囲気が見て取れる。
「奈々ちゃん、早く! 僕の部屋こっち!」
「こら、まずは手洗いうがいでしょー」
平常運転で和やかなムードに、虚を突かれてしまう。
ここに来るまでの道中も別段変わった様子はなかった。元気にしていたか、今はどこの高校に通っているのか――世間話も滞りなく、かえって申し訳なくなるほど。
『会いに行けなかったんだ。行っちゃダメだって言われて……』
だけれど、絢斗の言葉はこの耳で間違いなく聞いた。その時の衝撃と確信は絶対に忘れない。
漠然とした不安を抱えながらも、やはり誘いを断るなんて、私には到底できなかったのだと思う。
昔のように絢斗と無邪気に笑えたら、何も知らずにいた頃に戻れたら。どうしても希望が捨てきれない。なんのしがらみもなく私たちは幼馴染に戻れると、そんな淡い願いが叶うことはこの先あり得ないのに。
「ええっと、ごめん、ちょっと散らかってるんだけど……」



