ハロー、愛しのインスタントヒーロー



「あ、奈々ちゃん!」


学校は違えど、家が近いとよく出くわす。
職員室への呼び出しを食らった後、気怠さを感じながら帰路についていたら、バスを降りたタイミングで絢斗に会った。

彼の声が大きいのは慣れているし昔からなのでいいとして、これでもかというほどぶんぶんと手を振るのをやめて欲しい。周りからの視線がかなり痛い。

一直線に私へ向かって駆け寄ってきた絢斗は、屈託のない笑みで「おかえり」と言い放った。


「おかえりって……まだ帰ってないけど」

「うーん、でもここまで来たら帰ってきたような感じかなと思って!」

「だとしても絢斗のセリフじゃなくない?」

「こないだは『ただいま』しか言わなかったから、『おかえり』も言いたくなっちゃったのかも」


謎理論で片付けた彼が、へへ、と嬉しそうに目を細める。
追及するのもアホくさくなってしまい、無理やり納得しておくことにした。

肩を並べて、ほぼ同じ帰宅ルートを辿り始める。

喋るのは九割絢斗だ。残りの一割は私の相槌。適度に質問を挟まないと「聞いてる?」と言われてしまうから、なかなか油断できない。


「奈々ちゃん、今日元気ないね」