ハロー、愛しのインスタントヒーロー




「此花。お前、就職を希望してるんだったな」


放課後に職員室へ来い、とのことだった。呼び出しに応じた私への担任の一言目がこれである。

佐々木(ささき)先生はファイルから一枚プリントを取り出し、こちらへ差し出した。


「就職に関するプリントだ。ちゃんと目を通すように」


三年生になってから最初の進路希望調査は、先月終わったところだった。
私は去年の時点で、進学か就職かの二択で迷わず後者を選んでいる。もちろん、こないだの調査でも変わらず就職を希望した。

大学には特別行きたいわけではない。というかそもそも、うちにそんなお金はないはずだ。

周りは大抵が進学の道を選ぶ。就職希望は圧倒的に少数派で、特にうちのクラスの中では私くらいしかいないのではないだろうか。


「七月以降、求人票が校内に貼り出されるだろうから、それも確認しておけ」


高校経由での就職活動、受けられるのは一人一社まで、内定の辞退は不可――プリントにはそんな注意事項が連なっていた。
先生の話をぼんやり聞きながら適当に頷いておく。自分のこと、加えて重要なことであるのにも関わらず、いまいち実感がわかない。


「此花」