あまりにも呆気ない別れだった。玄関で靴を履く父の背中を眺めることしかできず、その姿が消えてからもしばらく動けなかった。
部屋が冷たいな。いつから暖房ついていなかったんだろう?
壁際に座って、膝を抱え込む。
寒い。寒くて痛い。苦しい。悲しい。
窓の外がどんどん暗くなっていく。何も見えなくなっていく。
ちょうど向かいの家の明かりがついて、絢斗の言葉を思い出す。
「……くりすます」
みんなの家にはサンタクロースがやってくるらしい。夜に来て、プレゼントを枕元に置いておいてくれるんだって。会ったことも見たこともないし、私の家には来ないからよく分からない。
プレゼントなんていらないの。ケーキも食べられなくていいの。
ただ私は、お母さんとお父さんが一緒に笑ってご飯を食べていてくれたら、それでいいのに。
「サンタさん、こないかなあ……」
プレゼントって、モノじゃなくてもいいのかな。お母さんとお父さんが仲良くしてくれますようにって、お願いしたら叶えてくれないのかな。
でも私、いい子じゃないから、今年も来てくれないかもしれない。
寒くて毛布にくるまっていたら、そのまま眠ってしまった。



