拗ねていたわけではなく、本当のこと。
絢斗と一緒にこの時間までいたのは初めてだった。でも、これまでに何度か、もっと遅い時間に帰ったことがある。叱られたことはない。怒られるのは好きじゃないのに、なぜだか物凄く寂しかった。
「帰りたくない。……わたし、帰らない」
スカートをぎゅっと握る。
思うところがあったのか、沙織ちゃんはそれ以上怒らなかった。代わりに、私の親へ挨拶をした後、うちに行こう、と言ってくれた。
「すみません、向かいの暮町ですが……」
インターホンを押す沙織ちゃんを見ながら、誰も出ませんように、とお願いした。けれども、結局母が出てきた。
「奈々? どうしたの」
私、沙織ちゃん、絢斗、と順番に見て戸惑う母に、沙織ちゃんがおずおずと告げる。
「あの、ななちゃんがこの時間まで公園で遊んでいたんです。学校からも帰宅時刻は五時半と言われてますし、その……」
「うちは六時でも七時でも構いませんし、娘にもそのつもりで遊ばせてますけど」
「え、いや……でも、危ないですし」
「とにかく」
母が沙織ちゃんの言葉を遮り、私の腕を引く。
「これはうちの問題なのでお気になさらず。わざわざ送っていただきありがとうございます。では」



