ハロー、愛しのインスタントヒーロー



一昨日来やがれ、と思う。本当に、一昨日でも、何年前でも、あの時の私にその言葉を言ってやって欲しかった。
まだ素直に絢斗の言葉を受け止められる自分で、それを聞きたかった。当時の私が喉から手が出るほど欲しかった言葉なのに、今は悲しさが付随していて虚しいだけだ。

怒りなのか悲しみなのか、はたまた憎さなのか。自分の中で一番ウェイトを占めている感情がどれなのかすら、綺麗に説明できやしない。


「会いたかったとか、そんなの……そんなのね、私の方がずっと思ってたんだよ」


何で会えないのって怒鳴るのも、もう何年も会ってないねって涙を流すのも、多分、行きつく先はおんなじだ。

寂しいって、私は絢斗がいなくて寂しかったんだって。割り切れない気持ちを表すのに、そんな便利な単語がある。


「奈々ちゃん……ごめん、ごめんね」


保冷剤を握り締めて冷え切っていた手に、突然温もりが伝う。
縋るために握るのではなくて、包み込むように重ねられた手。いつも体温が高くて、深爪気味で、しっとりしている絢斗の手。

遅いよ。遅いんだよ。もっと早くこうして欲しかったのに。


「僕もずっと会いたかったんだ。本当だよ。……でもね、」