『今日は運動会でした。徒競走で転んじゃってビリになったけど、みんなが励ましてくれました』
『こないだの修学旅行で肝試しをした時、泣いてしまいました。怖くて我慢できなかった。友達に笑われました』
『卒業アルバムのクラスページに、ドジな人といえば僕、と書いてあってちょっと悲しい。気を付けてるつもりなんだけどな』
新しい学校でも、絢斗は人気者になってしまった。要領が良くて穏やかでいい子、ではない。ドジで間抜けで情けないけれど憎めないやつ、といった感じで。
それは私しか知らない絢斗だったのに。私がそばにいるから、絢斗は大きなドジもしないで済んでいて、「いい子」だったのだ。
失敗しても泣いても情けなくてもみんなに受け入れられてしまう絢斗なんて、私がそばにいなくても大丈夫だと毎度証明されているようだった。
私から絢斗を取らないで。私だけの絢斗を、みんなのものにしないで。
そんなの、無理な話だって分かっている。叶わないから私はもう絢斗を諦めたかった。
「手紙の内容、いっつも自慢ばっか。自分はこんなにみんなに愛されてるって、当てつけみたいに書いてこられてさ。読むのだるかったんだよね」



