小学四年生の冬から今に至るまで。そのうち五年分は未開封だ。だから私の中で、絢斗は永遠に小学六年生のまま。そして絢斗もまた、そこからの五年間の私を知らないだろう。
「とっといてくれてたんだね」
彼が噛み締めるように呟く。
頼まれたって捨てないよ。
そう言いたかったけれど、本当は、何度も捨てようとした。ゴミ箱に一度投げ入れたこともあった。その度に拾い上げて皴を伸ばして、涙が出て。
私は捨てられなかった。大切じゃないふりをして、代わる温もりを他に求めたとしても、絢斗だけは、どうしても代用品を見つけられなかった。
それを早々に悟ってしまったから、全部引き出しに閉じ込めて見ないことにしたのだ。
毎月一度、引き出しを開ける度にちりついた胸の痛みが、その証拠だ。
「……絢斗は昔から、みんなに好かれてたよね」
気を抜くと拗ねたような口調になってしまう。でも彼には簡単に嘘を見破られてしまうのだから、もう隠したって無駄なのかもしれない。
『奈々ちゃんを、僕がひとりじめしたかったから』
違うよ。ひとりじめしたかったのは私だ。みんなの人気者だった絢斗をひとりじめできるのが、私の特権だったんだ。
走っても転んでも私の後ろをついてきて、ななちゃんって笑う。鈍くさくてしつこい絢斗は、私しか知らなかった。
それが、幼馴染の特権だったのに。



