何だこの小学生。ああいや、高校生だった。しかもあと一年で卒業する立派な青年。
あるイミ絶滅危惧種だな、とげんなりしつつ立ち上がる。絢斗は昔からふわふわぽわぽわしていたから、中身そのまま、体だけ大きくなったような感覚だ。
真向かいに座るのも何となく気まずくて、少しずれたところに腰を下ろす。
テレビで沈黙を誤魔化そうか、とリモコンに手を伸ばしかけた時、絢斗が口を開いた。
「……奈々ちゃん、あのさ」
「何?」
返事をしてもなかなか次の言葉がやってこないので、つと彼の方に視線を移す。
すると、絢斗は私と目が合うなり嬉しそうに頬を緩めた。
「へへ、やっとこっち見てくれた」
「は?」
「だって、奈々ちゃんずっと、全然僕の方見てくれないんだもん。やっとね、ちゃんと話せるなあって思って」
そういえば、再会してから絢斗は何度か「話したいことがある」と言っていた。ただのお喋りに付き合って欲しいというわけではなさそうだ。
「久しぶり、奈々ちゃん。ずっと会いたかったよ。会えて嬉しい」
一か月ほど前にも聞いたセリフを、彼がより真っ直ぐな心情を添えて伝えてくる。
いま改めてそう言うのは、私がもう絢斗を無闇に突き放すことはしないと確信を得ているからだろう。
「散々追い返されて嘘つかれて、それでも私に会えて嬉しいって言うの?」



