*
いわゆる雑用係は一か月ほど続いた。
私は昼休みに生徒会室へ通い、日比野くんは帰り道だけ私の家の前まで送ってくれる。
そこまで徹底していると、絢斗が家に押しかけてくることはなくなったし、完全に諦めてくれたのだろう。
ほっとしたのと同時、もともと空っぽだったはずの穴が、更に大きく深くなっているような心地がした。
「日比野くん、もういいよ」
五月の半ば。バスに揺られながら、そう伝える。
「今日で終わりでいいよ。あれから一度も来ないし」
「ストーカーくん?」
窓の外を眺めて頷いた。毎日変わらない退屈な景色なのに、何となく見てしまうのはなぜだろう。
「そっか。まあ此花さんには色々手伝ってもらったし、普通に助かったよ。ありがとう」
相変わらず淡白な返事だ。
彼はこの期間、全くと言っていいほど私に触れなかった。彼氏のふり、といっても、本当にただただ一緒に帰ってもらっただけだ。それ以上を要求するつもりも、必要もなかったという話ではある。
そのままバスを降りて他愛もない会話をしていたら、あっという間にアパートの前に着いてしまった。最初はぎこちなかったけれど、世間話くらいなら難なくできる程度には、日比野くんともコミュニケーションを取れるようになったのだ。
「じゃあ、今までありがとう」
いわゆる雑用係は一か月ほど続いた。
私は昼休みに生徒会室へ通い、日比野くんは帰り道だけ私の家の前まで送ってくれる。
そこまで徹底していると、絢斗が家に押しかけてくることはなくなったし、完全に諦めてくれたのだろう。
ほっとしたのと同時、もともと空っぽだったはずの穴が、更に大きく深くなっているような心地がした。
「日比野くん、もういいよ」
五月の半ば。バスに揺られながら、そう伝える。
「今日で終わりでいいよ。あれから一度も来ないし」
「ストーカーくん?」
窓の外を眺めて頷いた。毎日変わらない退屈な景色なのに、何となく見てしまうのはなぜだろう。
「そっか。まあ此花さんには色々手伝ってもらったし、普通に助かったよ。ありがとう」
相変わらず淡白な返事だ。
彼はこの期間、全くと言っていいほど私に触れなかった。彼氏のふり、といっても、本当にただただ一緒に帰ってもらっただけだ。それ以上を要求するつもりも、必要もなかったという話ではある。
そのままバスを降りて他愛もない会話をしていたら、あっという間にアパートの前に着いてしまった。最初はぎこちなかったけれど、世間話くらいなら難なくできる程度には、日比野くんともコミュニケーションを取れるようになったのだ。
「じゃあ、今までありがとう」



