ハロー、愛しのインスタントヒーロー



絢斗は生粋の馬鹿だから、私が言ったことは信じるに決まっているのだ。
確かにこの間、日比野くんのことをただのセフレだと断言はしたけれど、そのあと付き合うことになった、というのは不自然な流れではない。というか、そもそもセフレですらない。


「日比野くんしかいないんだよ、こんなこと頼めるの。だからお願い」


こんなこと頼めるの、ではなく、こんな好都合な相手、の間違いではあるけれど。自尊心をくすぐるには、あなたしかいない、という言い方が効果的である。

何の遮蔽物もなく見つめ合う。日比野くんはにっこりと微笑んだ。


「嫌だね」

「え?」

「だってそれ、俺にメリットある? 此花さんが此花さんの都合で此花さんのために依頼するんでしょ? わざわざ彼氏のふりだなんて、そんな面倒なこと、何のリターンもないのに引き受けるわけないよ」


全く迷いのない答え。まるで最初から用意されていたかのような回答だ。

私はこの人の脳内評価を書き替える必要がある。「ある程度の道徳心を持ち合わせた火遊びを嗜む生徒会長」から、「自己の利益不利益を見極め容赦なく他者を切り捨てる策士家」へ。


「それとも、何かしてくれるのかな。俺を喜ばせてくれるようなこと」