一切の動揺も驚きもない。ましてや、感情の揺れすらないのではないかと思うほど、相手の返答は落ち着き払っていた。
「私がそういうタイプに見える?」
「見えないね。でも、君だったらそれこそ警察に言いそうだけど」
もしかして、と日比野くんが口角を上げる。
「そのストーカーって、こないだの男の子?」
僅かに息を呑んだ気配が伝わったらしく、彼が「そうかあ、ビンゴかあ」と仰け反った。白い喉ぼとけが印象的だ。
「俺の見解だと、良くて幼馴染、悪くて振った相手って感じかなあと思ったけど……どう?」
「……ストーカーに近いものなことには変わりない」
「なるほど」
頬杖をつき、そのついでのように相槌を打った彼に、私は再度頼み込む。
「日比野くんと二人でいるところ見られてるし、それっぽいことしておけば勝手に勘違いしてくれると思う」
「それ俺じゃなくてもいいんじゃないの?」
「厳選した結果だよ。他の人なんてヤることしか考えてないし馬鹿だもん」
「言うなあ。俺も一応健全な男子高校生ですよ」
「日比野くんは馬鹿じゃないでしょ」
まあね、と彼が肩をすくめる。謙遜しないあたり、自分のポテンシャルを重々理解しているようだ。



