目を覚ますと、部屋の中は既にほんのりと明るかった。カーテン越しに外の光が入ってきている。
起き上がろうとしたところで、肌寒さを感じてベットに潜り込んだ。三月とはいっても、さすがに下着だけでは耐え難い。


「んー、起きたの?」


もぞもぞと動いている私につられて目が覚めたらしい。隣で寝ていた相手が、あくび交じりに問うてきた。
そのまま伸びをした男が、さむ、とすぐに腕を引っ込める。上半身裸なのだから、それはそうだろう。


「私、シャワー浴びてくる」

「俺も一緒に入ろうかな」

「馬鹿じゃないの? 変態」

「つれないな~、昨日はあんなに愛し合ったのに」


男の言葉を無視して浴室へ向かう。シャワーのレバーを思い切り引いた。
勢い良く出てきた水を頭から被って、ぼんやりとしていた思考ごと冷やす。

昨日はあんなに愛し合ったのに、か。――笑えてくる。
どうせ好きでも何でもないくせに。欲の発散に都合のいい女、くらいにしか思ってないくせに。

でも、私だって同罪だ。
一人は寂しい。冷たい部屋にいると悲しくなる。そういう時、人の肌が何よりも温かく感じるのだ。

年頃の男の子は大体、誘えば乗ってきてくれる。欲に忠実だ。そして、私は温もりを得る。
別に誰にも迷惑をかけていない。利害の一致、ただそれだけ。