伝えられるかな、じゃない。伝えていくんだ。
仕草で、言葉で、表情で、目で、私にできうる限りの方法で。絢斗が今までそうしてきたように、真っ直ぐ、ひたむきに、ただ純粋に。

絶対にできるはずだ。この人と一緒なら、この人のためなら、私はいくらだって優しくなれるはずなんだ。


「絢斗。ずっと一緒にいよう」

「奈々ちゃん、」

「二人ならなんにも怖くない、でしょ」


どんな未来からも、どんな心ない言葉からも、私が絢斗を守るよ。だから、私が動けなくなった時は、立ち上がれるまで絢斗がそばにいてね。

絢斗が頷く。何度も頷いて、涙を流す。やがて嗚咽交じりの泣き声が静かに響いた。
泣き虫でいいよ。その代わり、すぐ隣で涙を拭いて慰めるのは、ずっと私がいい。

ゆっくり顔を上げた彼が、私の手を遠慮がちに握った。そのまま部屋の奥に進んで、手を離される。


「絢斗?」


こちらに背を向けた彼は、机の引き出しを開けた。何かを探しているようだ。


「奈々ちゃん、ほんとに、ずっと一緒にいてくれる?」


ぴたりと動きを止めた絢斗が、鼻声で問うてくる。
まだ不安なんだろうか。だったら、もう一度しっかり伝えなければいけない。


「うん。一緒にいるよ。もう離れない」