ハロー、愛しのインスタントヒーロー




「お邪魔します」


土曜日の昼下がり。
玄関先で出迎えてくれた相手に、軽く頭を下げる。


「そんなに畏まらないで。ゆっくりしていってね」


そう言って微笑んだ沙織ちゃんからは、もう一切の悪意は感じられなかった。安堵と懐かしさで泣きそうになる。

唇を結んで頷き、靴を脱いだ後、きちんと揃えてから立ち上がった。暮町家の玄関は昔から綺麗に整理整頓されている。


「絢斗を、よろしくね」


二階への階段をのぼろうとした時、背後からそんな言葉を投げかけられた。
振り向き様に見た沙織ちゃんの頬に、えくぼが浮かぶ。それに応えたくて、適切な返答が見つからなくて、強く顎を引いた。


「はい」


一段一段踏みしめる度に、鼓動が速くなっていく。
緊張しているのかもしれない。少しだけ臆病になっているのかもしれない。でも一番は、やっと手放しで大事にしたいと思えることへの高揚感だった。

部屋の前に立ち、静かに呼吸を整えてから扉をノックする。


「絢斗。入っていい?」


途端、中からがさごそと物音が鳴った。それから目の前で勢いよく扉が開く。


「な、奈々ちゃん、早かったね」

「そうかな。昼がいいって言ったの絢斗でしょ?」