ハロー、愛しのインスタントヒーロー



その言葉は自然と口から滑り出た。
井田くんが「お礼言うのはまだ早いよ」と小首を傾げる。


「絢斗とちゃんと仲直りしてから、な」

「……うん」


じゃ、と軽く手を挙げた彼は、そそくさと先に歩き始めた。


「井田くん」

「んー?」

「夜に女の子を送って帰ろうとしないのは、普通にモテないと思う」

「…………送るよ」

「いや、いい。駅すぐそこだし」

「いいんかい」


気ぃ利かなくてすいませんね、と拗ねた横顔に、もう一度呼びかける。


「井田くん」

「なにー?」

「井田くんって、いい人だね」


彼が「今更かよ」と笑う。それに少しだけ笑い返して、私も駅に向かって歩き出した。

スマホを取り出し、目当ての人物に電話をかける。相手が応答したのは五コール目だった。


「会って話したいことがあるの。聞いてくれる?」


長い夜も、暗い未来も終わった。
日が落ちた空はいつもと何ら変わらず紺色を纏っているけれど、不思議と透き通って見えた。