そう言うや否や腕を離され、呆気に取られる。
つと周囲を見渡した彼は、「注目浴びすぎたからここ出ようか」と肩を竦めた。
「いやー……怒鳴ってごめん。絢斗から聞いてたイメージと実際に会ったイメージがあまりにも違ったからさ、もしかしたら絢斗がたぶらかされてんじゃねーかなって疑っちゃってたわ」
店を出て早々、きまり悪そうに井田くんが頭を掻く。
「だってさ、あいつ詐欺とか絶対引っ掛かるタイプじゃん」
「……小学生の頃、『飴あげるからおいで』って言った不審者についていきそうになってた」
「まじか。ほんとに飴でついていくやついるんだ」
小さく吹き出した後、とにかくごめん、と彼が手を合わせた。
「色々無神経なこと言って悪かったなーって、反省してます」
「いいよ。……全部、本当のことだから」
「此花さ、」
「まともな恋愛したことないんだ。絢斗のそばにいる資格がないのは、私の方」
風が凪ぐ。
数秒の後、井田くんはいつものように笑った。
「違うよ」
「え?」
「此花さんがいないと、きっとあいつだめだめだって。絢斗から“ななちゃん”とったら、何が残んの?」



