ぴ、と電子音が鳴った。冷蔵庫にマグネットで張り付いているタイマーを三分にセットして、スタートボタンを押す。
カウントダウンが始まった数字をしばらく眺めていたら、あっという間に三十秒経ってしまった。

お湯を注いだカップ麺。蓋の隙間から漏れ出る湯気を無感動に目で追って、消えゆくまでを見届ける。

――奈々(なな)は、俺のために死ねる?

ついさっき問われた言葉が、脳内をぐるぐると回っていた。
私にその質問を投げたのは、もう二度と会えない、会わない人だ。


『お前は、俺のこと、好きじゃない。俺を好きなんじゃなくて、支えが――寄り添える人間が、欲しかっただけ』


彼の言ったことは、きっと間違っていないと思う。好きだ、愛してる、と体を重ねながら何度も伝えたことはあったけれど、それで空っぽな気持ちが全て満たされるかといえば、決してそんなことはなかったのだ。

何だかもう、ずっとそんなことを繰り返している。
さっき別れを告げた彼が唯一、私の内側まで覗き込んでくれたような気がした。彼となら大丈夫かもしれないと思った。でも、結局駄目だ。

ぴぴぴ、と殺風景な部屋にタイマーの音が響き渡った。


「……うるさいよ」


自分で設定したのに、腹が立って泣けてくる。今日は朝から泣いてしかいない。

私はやっぱりまた一人だ、と実感したのは、大嫌いなクリスマスの夜だった。