何を、言ってるんだこの男は。私は何を言われてるんだ。
「好きなやつが死ぬほど悩んでんのに、それ聞いて顔色一つ変えずに『そっか』で終わらせる馬鹿がどこにいんだよ! そんなん『好き』じゃない。あんたは、絢斗に好きって言われてる自分が好きなだけだ。絢斗の好意につけこんでるだけだよ」
「…………腕、痛いから離して」
「離したら逃げるだろ」
何なの。何こいつ。うざい。むかつく。絢斗絢斗ってさっきから何度も。
「離してって言ってんじゃん!」
腕を振る。振りかぶる。全然効かない。腹が立つ。
『絢斗が此花さんのことを大事にしてるのも、すごい好きなんだろうなっていうのも、俺は絢斗の話を聞いて分かってるつもりなんだ』
うるさい。うるさいうるさいうるさい。そんなの、絢斗のことなんて、私の方が何倍も何百倍も――
「あんたに分かってたまるか! 何にも知らないくせに! 急にでしゃばって、分かったような口きかないでよ!」
私がどれだけ苦しかったかも、どれだけ泣いたかも知らないのに。どう割り切ってどう乗り越えてここにいるのかも知らないのに。
私と絢斗の箱庭を、大切に守ってきた場所を、全部嘘だったみたいに言うな。
「悪いけど、まだでしゃばるよ。俺は絢斗の友達だから、絢斗が傷つくのは見たくないんだ」



