ハロー、愛しのインスタントヒーロー



立ち上がった私に、井田くんが表情を強張らせる。

説得なんてしなくていいからね。正論もいらない。
だって無理だ。私の大切にしているものと絢斗の大切にしているものが違うから、この先どうしたって苦しくなる。

終わりを待つだけの始まりに、自ら足を突っ込む必要なんてない。


「絢斗とは話さないの?」

「もう話したよ。終わったの。私とはキスできないって、ごめんって、絢斗が言った」


平行線を眺めていても無駄。いつか交わるかも、と希望を持つことは無駄。平行線は永遠に交わらないから平行線なのだ。

ああ、でも、平行線だから私たちは今まで、幼馴染でいられたのかもしれないね。


「じゃあ、今までありがとう。勉強頑張って」


飲みかけのドリンクを持って、今度こそ席を立つ。
井田くんの横を通り過ぎようとした時、勢いよく腕を引かれた。


「あんたさあ、ほんとに“ななちゃん”かよ」


手から滑り落ちたドリンク容器が床を転がる。中で氷がごろごろ唸っている。


「俺が聞いてたのと全然違うわ。自分勝手だし、頑固だし、意気地なし。絢斗が好きになる要素、あんたのどこにあんの?」

「……は」

「あんた、ほんとに絢斗のこと好きなの?」