*
「でも、今年同じクラスになれて嬉しいな。此花さんのこと前から気になってたんだよね」
隣に座る男が私の肩に腕を回す。
帰り道のバスの中、やけに密着してくる相手に悟られないようため息をついた。
「そういう嘘つかなくていいよ。どうせ私としたかったんでしょ?」
この人はムードを大切にするタイプか、と分析し、少々げんなりする。優しく扱ってくれる男の人は好きだけれど、歯の浮くセリフばかり並べる男は嫌いだ。
「あー、結構ドライな感じ? いいね。楽で助かるよ」
途端、男の空気が一変した。私との距離を僅かに空けて座り直し、口の端で浅く笑う。
どこか物騒な視線に胸の奥がざわつきながらも、私は無表情を貫いた。
「日比野くんの方こそ、そういう感じなんだね」
さほど長くない毛先。制服はしっかりと校則通り着用していて、装飾品も一切身に着けていない。
彼は私と同じ理系クラスで勉学に真面目に励んでいる、優秀な生徒だ。
「生徒会長様がこんなことしていいの?」
小首を傾げて挑発的に微笑んでみる。
彼は目を細めると、「やだな」と肩をすくめた。
「何もしてないよ。まだ、ね」
「でも、今年同じクラスになれて嬉しいな。此花さんのこと前から気になってたんだよね」
隣に座る男が私の肩に腕を回す。
帰り道のバスの中、やけに密着してくる相手に悟られないようため息をついた。
「そういう嘘つかなくていいよ。どうせ私としたかったんでしょ?」
この人はムードを大切にするタイプか、と分析し、少々げんなりする。優しく扱ってくれる男の人は好きだけれど、歯の浮くセリフばかり並べる男は嫌いだ。
「あー、結構ドライな感じ? いいね。楽で助かるよ」
途端、男の空気が一変した。私との距離を僅かに空けて座り直し、口の端で浅く笑う。
どこか物騒な視線に胸の奥がざわつきながらも、私は無表情を貫いた。
「日比野くんの方こそ、そういう感じなんだね」
さほど長くない毛先。制服はしっかりと校則通り着用していて、装飾品も一切身に着けていない。
彼は私と同じ理系クラスで勉学に真面目に励んでいる、優秀な生徒だ。
「生徒会長様がこんなことしていいの?」
小首を傾げて挑発的に微笑んでみる。
彼は目を細めると、「やだな」と肩をすくめた。
「何もしてないよ。まだ、ね」



