嫉妬、後悔、自己嫌悪、そして、強迫観念。捻れて絡まって風化して、出来上がったのは愛情か恋情か。
愛の裏には必ずと言っていいほど憎しみがある。好きか嫌いかじゃない。好きだし嫌いなのだ。

沙織ちゃんは絢斗のことが好きで嫌いだった。私は沙織ちゃんのことを軽蔑すると言いながら、過去の温もりを忘れることは決してできない。


『奈々ちゃんに嫌われたことが、すごくショックだった』


沙織ちゃんにとって、私も好きで嫌いな存在だったのだと、思っていいのだろうか。


「ごめんね。ごめんなさい……それが、絢斗とあなたを引き離していい理由には、ならないのにね……」


俯いた彼女に、もういいです、とはお世辞にも言えそうになかった。話を聞いて、じゃあしょうがないですね、とも思わなかった。

だって、絢斗はそのせいで何年も苦しんだのだ。私も少なからず辛かった。
彼女の考えに賛同する日は来ない。何度繰り返しても私は彼女を軽蔑するし、気持ち悪いと言うのだろう。


「……それだけじゃ、ないですよね」

「え?」


先ほどから感じていたこと。沙織ちゃんが、どうして今になって私にこんな話をしているのか。


「絢斗に、何かあったんですか」