ハロー、愛しのインスタントヒーロー



私の知っている絢斗は、泣き虫でふわふわの不思議な男の子だった。けれども手紙に書いてあるのは全く知らない人のことのようで、想像もうまくできない。

どんどん知らない絢斗が増えていく。私の知らない話が増えていく。

彼の手紙を読むのが辛くなってきたのは、その頃からだ。
楽しい、嬉しい、そんな感情が綴ってある。私は今も悲しくて寂しいのに。ぽっかり空いた穴が塞がらなくて、夜になると辛くて苦しいのに。

でも彼と繋がっていられるのは手紙しかないから、自分の中にある虚しさには見て見ぬふりをした。

読むのが憂鬱になった。返事を書く筆が段々と遅くなった。
中学生になり、私は彼に返事を出すのをやめた。


『ななちゃん、元気ですか?
 こないだの手紙はちゃんと届きましたか? 返事がなかったので心配です。』


罪悪感から、次第に封も開けなくなった。
郵便受けに封筒が入っていたら、それだけで苦い気持ちになる。未開封の手紙が積み重なっていく。

私が返事をせずに無視し続けても、彼は月に一度、必ず手紙を送ってきた。


『暮町 絢斗』


漢字の苦手だった彼が、綺麗な字で自分の名前を綴っているのを見た時、もうあの頃の絢斗は戻らないんだ、と物凄く悲しくなった。