ハロー、愛しのインスタントヒーロー



凡庸な引き留め文句だった。だけれど、それ以上どう言葉を尽くせばいいかなんて、知る由もなかった。


「……うん。ごめんね」


ごめんね、ななちゃん。
私が何を言っても、彼はそれしか返してくれなかった。

泣いても欲しいものが手に入ったことなんてないからいつもは泣かないけれど、その時は涙がぼろぼろ止まらなかった。私が泣いて引っ越しがチャラになるのなら、そんなことが叶うのなら、体中の水分が全部なくなるまで泣いてやるつもりだった。

でも、泣き虫の絢斗は泣いていなかったし、引っ越しももちろんなくならなかった。

あっさりとこの町を去った彼は、その一か月後、私に手紙を寄越してきた。


『ななちゃん、元気ですか?
 僕はまあまあです。でもやっぱり、ななちゃんがいないから、あんまり元気じゃないかも。

 春から新しい学校にいきます。ちゃんとみんなと話せるか不安です。またいたずらされたらどうしようって、ちょっと怖いです。
 すぐに泣くからだめって言われたから、泣かないように頑張ろうと思います。』