奈々ちゃんの喜ぶことは、できるだけしたいと思う。
前に、沙織ちゃんのご飯で一番好きなのは生姜焼きだと奈々ちゃんが言っていた。
「また? この間も食べたでしょ?」
「いいからー! あ、あとね、新しいゲームのソフト欲しい!」
「ゲーム?」
「うん! ななちゃんとやりたいの! ななちゃんが好きなキャラクター出てるんだって!」
「……絢斗。ななちゃんと仲良くするのはいいけど、うちはうち、よそはよそなんだから……」
「遊びに行ってくる!」
「絢斗!」
僕が奈々ちゃんのそばにいなきゃ。泣いたら隣にいてあげなきゃ。
僕がたくさん泣いても奈々ちゃんは助けてくれたから、今度は僕が助けてあげるんだ。
クリスマスは嫌い、と奈々ちゃんが言った。すごく寂しくて辛かったって。
だから決めたんだ。寂しくて辛いクリスマスにならないように、クリスマスは楽しくて嬉しいって奈々ちゃんが思えるように、僕は毎年奈々ちゃんのそばにいよう。
「ななちゃん、僕がいるよ。ずっと一緒にいる。毎年、ぜったいに、そばにいるから」
なのに、僕はその約束を守れなかった。
心の準備も、きちんと話もできないまま、僕は奈々ちゃんを一人置いて、この町を去ることになった。



